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会長挨拶

 このたび第22回日本褥瘡学会近畿地方会学術集会会長を拝命しました、滋賀医科大学皮膚科の藤本徳毅です。2025年2月24日(祝)に滋賀県大津市のピアザ淡海におきまして学術集会を開催させて頂きます。私どもにこのような機会を与えていただき、大変光栄に存じます。会員の皆様、協賛いただいた多くの企業様、滋賀医科大学学術集会運営スタッフに、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

学術集会のポスターや抄録集の表紙に鬼がいる事に気付かれたと思います。これは、江戸時代の初期にその発祥があるといわれている大津絵という由緒ある近江の民画です。その伝統を引き継いでいる四代目の松山さんに、この学術集会のためにオリジナルの鬼を描いていただきました。大津絵を代表する寒念仏という鬼に、いくつかの医療器具を身にまとわせて非常にユーモラスな鬼を創造してもらい、今回の学術集会のメインキャラクターとしました。寒念仏とは、見た目は慈悲ある僧侶が中身は鬼や偽善者だと風刺したものです。我々医療従事者も、褥瘡の患者さんから医療器具を身にまとった鬼と思われないよう、幅広い知識と確かな技術力を持って褥瘡に向き合っていきたいものです。

ところで、鬼とは一体なにものでしょうか。古来より日本において、鬼は疫病や自然災害などを引き起こす、目に見えない恐ろしいモノとして捉えられてきました。その後、反社会的や反人道的な人、嫉妬や恨みによる異常な精神状態の人、村落共同体の外からの異人など、排除すべき人に対するレッテルとしての鬼や、安倍仲麻呂や菅原道真のように死後も恨みにより生き続ける存在としての鬼などが出てきました。さらに、インド仏教と結びつき夜叉や羅刹のような畏怖の対象としての存在や、餓鬼のような輪廻転生の最底辺の存在としても鬼が描かれてきました。また、一寸法師や金太郎の鬼のように、弱い存在や一緒に遊ぶフレンドリーな存在としても描かれるようにもなっていきました。このように鬼は多種多様であり、江戸時代には大津絵にみられるようなコミカルなキャラクターにもなっていきました。世界鬼学会の八木透会長によれば、「海外にも類似したモノはいるが、極めて多種多様な顔を持つ鬼は日本独自の存在」だそうです。世界では多様性の重要性が叫ばれている昨今ですが、鬼をみていると、日本においては古来より多様性を受け入れ共存する文化が根付いていたことがわかります。日本褥瘡学会近畿地方会も、多種多様な医療関係者が同じ会場で一緒に議論し深めることができる多様性のある学会であり、まさに鬼がメインキャラクターにふさわしいのではないかと、私個人には思えてなりません。

今回のテーマは「湖国から発信する褥瘡ケアと予防の最前線」ということで、特別講演は、大阪府済生会吹田病院の皮膚・排泄ケア特定認定看護師である間宮直子先生と、フットケアの専門家である明治国際医療大学附属病院皮膚科教授の中西健史先生にお願いしています。滋賀医科大学は全国でも有数の特定行為に力をいれている大学ですので、特定行為のシンポジウムも企画しました。また、難治性の褥瘡に対して実臨床でどのように対応すべきかを考える機会として、携帯アプリを使って聴講者よりアンケートをとりながら双方向性にすすめるセッションも用意しています。今回は、学術集会の準備をコンベンション会社にあまり依存せず運営スタッフで1から作り上げて来ましたので、至らない点も多々あるかと思いますが、参加者に楽しく勉強になる学術集会であったと感じてもらえるよう、運営スタッフ一同で鋭意準備して参りましたので、多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。

 

第22回日本褥瘡学会近畿地方会学術集会

会長 藤本徳毅

(滋賀医科大学 皮膚科学講座 教授)

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